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【読書レビュー】正欲を読んで考える。圧倒的少数派な嗜好を持って生まれた人はどうすれば良いのか

世の中の見方が変わる本

この本を読んだ後、多分間違いなくあなたの「世間を見る目」が変わると思う。
自分の想像力の範囲を広げてくれることが読書の良さだと常々思っている。

この本は「自分の想像力の狭さ。自分の想像力の外側の世界があること」に気づかせてくれる。

自分が抱えている苦しみとは全く種類の違う苦しみが存在することを教えてくれる。

この本を読んで嫌悪感を抱く人もいるようだ。

でも、この本の主人公たちと同じ悩みを抱えている人たちはこの世の中に確実に存在する。
普段知らず知らず関わっている可能性もあるし、自分の子どもが同じ悩みを将来抱えることになるかもしれない。

そう思うとこの本で描かれている悩みを嫌悪感で遠ざけてしまうことは正しいとは思えない。
自分はこの本は多くの人に是非読んでほしい。
この本で描かれている悩みをどう解決していけばいいかはパッとは思いつかない。

でも、みんなで考えて行く必要がある悩みであることは確実だと思う。

以降ネタバレ含む

食欲/睡眠欲/物欲は裏切らない

この物語では圧倒的マイノリティな性的指向を持った人が登場する。
その人物たちが物語の中で語る言葉が以下である。

睡眠欲は私を裏切らないから

 

端的に言うと、食欲は人間を裏切らないから、です

 

「物欲には裏切られないから」

このセリフを読んで何を言っているかわかる人がどれくらいいるだろうか。
この物語に登場する人物たちは、圧倒的少数派な性的嗜好を持って生まれてきた。

世の中はマジョリティの性欲に従って動いている。
ある程度年をとったら異性と恋愛をし、異性と家庭を築いて子孫を残すことが当たり前になっている。

季節ごとのイベントは異性との恋愛をベースにしたものが多く、テレビ番組や世の中にあふれかえる広告、商品群もマジョリティの欲求に従って作られている。

そんな皆が当たり前だと思っている世の中の流れに、他の人とは異なる性的指向を持って生まれた人は乗ることができない。

何も悪いことをしたわけでもないのに、周りと同じ話題で盛り上がったり、季節のイベントを楽しむことができない。
常に世の中から疎外されている。
最近ではLGBTQ等が注目されているが、その枠内にも当てはまらない嗜好を持った人たちがこの世の中には存在する事を教えてくれる。

自分の子どもがマイノリティとして生まれたら何ができるだろう

この本を読んで、
いかに自分が想像の枠内でしか物事を考えられていないか。
を知った。

と同時に、「自分の子どもがマイノリティとして生まれた時親である自分は何ができるだろう。何をすべきだろう。」という疑問が頭に浮かんだ。

例えば自分の子どもの生まれ持った欲求が、世間からは認められないものだったら?

異性愛者は欲求を消化する方法が世の中に溢れている。
デートスポットはたくさんあるし、ビデオも簡単に見られるし、ホテルも用意されている。

異性愛者は自分の性欲を世間から肯定されている。

でも嗜好の違いから生まれ持った性欲を肯定してもらえない人たちがこの世の中には存在する。
もし、自分の子どもがマイノリティとして生まれてきたら、自分は何をしてあげられるだろうか。

同じ嗜好を持った者同士で網を編む

生まれ持った嗜好が世間と合わず悩んでいた登場人物たちの心境は少しずつ変化する。

自分をどこにも連れて行ってくれない両脚をもいでしまいたくて...(略)
自分の人生なんてもうどうにもならないと思っていた。

「だから、自分が楽しみたいことを楽しみ続けたいんなら、規制から逃れてラッキーよりも、胸を張って楽しみ続けられるような方法を探したい、かも」

絶望に打ちひしがれていた登場人物たちは、仲間を集めて仲間同士のネットワークを作ろうとする。
それがどうなるか...そこはぜひあなたに確かめてほしい。